少人数私募債は銀行など金融機関からの一般的な融資と比べ会社にとってリスクの少ない資金調達方法だといえます。ここでは少人数私募債を発行する為にはどのような条件が存在するのかを紹介いたします。

■ 従来型は社債権者が49名以下の直接募集

  少人数私募債には、社債の勧誘者が49名以下でなければならないという規則があります。これは社債概念として、50名以上を募集(公募)、50名未満つまり49名以下を私募と定められていることが根拠になっています。要するに50名以上と49名以下を境として、一般の不特定多数向け募集(公募)債、特定の少数を対象とする少人数私募債に分かれているということです。厳密に法律の条文を追っていくと、あっちこっちに飛んだりと結構複雑なのですが、何のことはなく49名以下であれば何人でもかまわないというごく単純な結論です。
  ただし、この規則には落とし穴があります。それはこの人数はあくまで勧誘者の数だということです。ここは従来から、よく誤解されるところで、とりあえず多くの人々に声をかけ、最終的に49名になればよいと勘違いされている方もおられるようですが、実は初めから最後まで勧誘数は49名以下でなければなりません。50名になると私募ではなく募集(公募)になってしまいますので注意して下さい。
  さらに、少人数私募債は短期間に何度でも発行できますが、6ヶ月間はこの人数制限が適用されています。具体的には、同一種類(償還期限と利率が同じ条件)の社債を数回発行するケースを指しますが、このルールにより累計人数も49名以下という人数基準が適用されます。例えば1回目の発行で20名勧誘したら、2回目に発行する場合は29名まで勧誘することができます。ただ初回発行日より6ヶ月を経過したら、改めて49名以下で少人数私募債を発行することができます。
※一般的に私募に対する用語として公募が使われますが、金融商品取引法上は単に募集といわれています。

■ 社債発行総額を社債の最低額で割った数が50未満

 少人数私募債は、社債管理会社を置かなくてよいことになっています。それは社債総額を社債最低額面で割った数が50未満、つまり49以下の場合には社債管理会社を置かなくてもよい、という会社法の規定からきています。

<試算式(以下社債権者は49名で計算)>

50万円 2,450万円÷50万円 = 49<50
100万円 4,900万円÷100万円 = 49<50
150万円 7,350万円÷150万円 = 49<50
200万円 9,800万円÷200万円 = 49<50

※ 券種最低額面の整数倍で発行可能ですが、50口(発行枚数)未満。

 上記の計算式は、社債管理会社を置かなくて良いという条件の根拠になるだけでなく、社債の発行総額と1口の社債最低額との関係、さらには勧誘者(購入後は社債権者)数を検討する際の重要な目安になります。例えば、上記の試算例で見ますと、1口の最低額面が50万円の場合は、最大49名に対し総額2450万円まで発行できるということです。これを最低額面が倍の100万円になると、社債総額もやはり倍の4900万円になります。

■ 満期償還期間

一般的には下記のとおりです。
(1)設備資金――中、長期の3〜5年。
(2)運転資金――短期で2〜3年。
(3)資金使途、償還能力などによっては、さらに長期債の発行。
(4)償還方法――最終期限に一括償還の条件が一般的です。

■ 金利の設定

  金利ですが預金金利より高め、そして取引金融機関の貸出し適用金利より低く設定するのが社債権者、発行体の双方にとってメリットのある水準です。また長期プライムレートに0.25%刻みで加算した固定金利という決め方もあります。なお利息支払方法――年1回の後払いが多いようです。

■ まとめ

 さてここまで読んで、「簡単だという割には、結構ややこしいそうな条件や制約があるではないか」と感じられるかもしれませんが、あまり気にしないで下さい。下記の「発行条件要約表」も参考にしながら、少人数私募債のおおまかなイメージをつかんでいただければよいかと思います。

<発行条件要約表>

発行体 株式会社、合名会社、合資会社、合同会社、特例有限会社、特別な法律により債券を発行可能な法人
社債募集総額 社債募集総額に対して応募額に過不足が生じた場合は、応募額をもって適宜決定
社債権者の数 49名以下の縁故者中心の直接募集。
1口の最低社債額 社債総額を社債の最低額で割った数が49以下であること。金融証券取引法では適格機関投資家250名までの要件が緩和され、上限なし(転売制限があれば勧誘の相手方から除外)。
担保、保証人 要件ではない
社債管理会社 委託不要
告知義務 <社債券を発行する場合>
(1) 有価証券通知書・有価証券届出書を提出していないこと
(2) 記名式で一括譲渡以外の譲渡が制限されていること
(3) 表示単位未満分割制限が課せられていること
※上記(2)(3)の制限付きであることを発行時、期中の勧誘時に相手方に告知
(4) (2)(3)有価証券に記載されていること
<社債券を発行しない場合>
勧誘中または発行要項に上記(2)(3)を記載し、告知
証券取引法上取扱 1億円未満を含めて有価証券通知書、有価証券届出書は提出していない旨の親切告知
その他 発行要項に発行総額、金利、利息支払い方法、償還方法および期限など実態に合わせて記載し告知

※告知義務があるのは発行総額が1億円以上の場合です。1億円未満の場合、告知義務はありませんが告知しておくと金融証券取引法上は親切告知となります。