これまで日本では新規事業を立ち上げたい、設備・運転資金が足りないという場合、民間金融機関である都市銀行・地方銀行・信用金庫や政府系金融機関の国民生活金融公庫などに借りにいくのが常識でした。しかし最近の金融機関は金融行政の影響から貸し渋りや貸し剥がし、最近は自己査定ルールといった言葉に象徴されるように、中小企業に対し大変厳しい姿勢をとっています。こうした中、新しい動きとして少人数私募債が見直されつつあり熱い注目を集めています。
少人数私募債とは、金融機関からの一般的な融資とは別に、縁故者や役職員、取引先などから直接資金を調達する方法として利用されてきた社債です。会社法上の会社(株式会社、合同会社、合資会社、合名会社、特例有限会社など)なら、信用と償還能力があれば発行することができます。
また一般的な融資では、例えば貴方の会社が金融機関から1000万円借りても事前段階で保証協会への保証料、銀行への前払利息などが引かれてしまい全額が入ってくるわけではなく、返済も据え置き期間後すぐに発生してしまいます。しかし少人数私募債であれば全額が貴社の口座に振り込まれ、償還期限内は月々の返済もなく、利息も年1回の後払いとなります。以上のことから他の融資と比べても事業への資金調達法として非常に有効といえます。
■ 中小企業の資金調達方法
一言でいうと、少人数私募債とは有価証券で、主として会社法上の会社が発行体になります。しかし従業員が数人ほどの小さな会社でも信用と償還能力があれば発行可能で、連帯保証人や担保も発行条件として問題になりにくく、中小規模の企業にはぴったりの資金調達法といえます。
銀行をはじめとした金融機関も調査を行い、勉強もしているのでしょうが、融資を求めてくる個々の会社の業種・業態を、必ずしも隅々まで把握しているというわけではなく、決算書の内容や担保がどのくらいあるかということだけで機械的に会社を判断してしまう金融機関も少なくないようです。
つまりその会社が資金を必要とする新たな事業計画の意味や可能性、どのように会社が伸び、どのようにマーケットが動くかといった数字に現れにくい要素が審査されない面があります。それでは有望な中小小規模企業、将来性のあるベンチャー企業は育ちません。少人数私募債は単に新しい資金調達の方法というだけでなく、こうした数字で表しにくい会社の未来に投資してもらう独自の仕組みでもあります。
■ 信頼の絆で共存共栄
一般の公募社債が金利、売却益(キャピタルゲイン)を目的とする不特定多数の投資家に向けて発行されるのに対し、少人数私募債は社長や取締役会で承認されたいわゆる特別縁故者などを主な対象とします。つまり社長および社長の一族、友人、知人、自社役職員、懇意な取引先など、相手は会社に馴染みのある顔見知りの人達です。この皆さんに会社のよき理解者・協力者になっていただけるのが少人数私募債なのです。
なお少人数私募債の勧誘をする人の数は49名までとされています。今後会社の発展が見込め、経営者に信頼があれば、少人数私募債による資金調達は非常に有効な手段になります。言うなれば少人数私募債を購入していただいた方々は、会社にとって心強い理解者であり、頼もしい協力者の集団でもあります。この私募債により発行会社と取引先との協力関係が一段と深まり、共存共栄が図られると思います。
最近では、少人数私募債に対する理解が広がり、2003年(平成15年)4月からは東京都の文京区役所と足立区役所が発行会社に利子の一部補助を開始するなど、自治体にも積極的に支援する動きが出始めています。少人数私募債を取り巻く環境は、確実に整いつつあるといっていいでしょう。