少人数私募債は銀行など金融機関からの一般的な融資と比べ手続きの簡略さ、社会的評価の向上、比較的ローコストに発行できるなど数々のメリットがあります。ここでは発行するにあたり必要な取り決めごとをご紹介いたします。

■ 購入依頼者の決定

 勧誘する人数は49名が上限です。事前に、この枠内で募集総額と見合う人数を決め、購入を依頼する方々の名簿を作成します。

 購入依頼者には縁故者という規定はありませんが、事業計画書の内容や発行後の経営内容などの情報を開示しても大丈夫な人、守秘義務を遵守する信頼できる人ということになると、どうしても次のような社長および社長の一族、友人、知人、自社役職員、取引先を中心とした縁故者になります。

(1)社長およびその親族関係者
(2)自社株主およびその親族関係者
(3)自社役員および従業員
(4)得意先もしくはその会社の社長
(5)仕入先もしくはその会社の社長
(6)社長の友人・知人
(7)自社の顧問弁護士・公認会計士・税理士など信頼できる立場の人
(8)その他、社長もしくは役員が信頼する人

 名簿ができた段階で、改めてリストに上がった方の守秘義務に対する考え方、あるいは会社経営への協力度合いなどを検討します。堅くいえば適格審査ということですが、実際には上記の項目の基準に合っているかどうか、複数の社員で確認し合うといった感触だと思います。こうした作業を経て、最終的に購入依頼者を決定します。

■ 社債利息の支払

 通常、借入金の利息と区別するために社債利息という科目を設けて管理し発行要項に添って計算します。利払い日と決算日のズレに関しては、前回利払い日の翌日から決算日までの利息額を計算し、未払い社債利息を計上(発生主義)することになります。ただ、社債利息を受け取る個人・法人は、厳密な発生主義による期間対応計算によらなくても、利払い基準により収益計上(入金現金主義)することが可能です。また、中途解約に対する支払い利息は、償還する日までの支払い利息を日割り計算し、源泉税20%を差し引きます。申し込み時点で短期間(例えば6ケ月、1年)の解約利率は約定利率より低目にするよう別途発行要項で取り決めておくとよいでしょう。

■ 元金の償還

 満期日になったら、元金を返済しなければなりません。満期日になってお金が無いということにならないように、期限に合わせて計画的に減債基金を積み立てておく必要があります。前項でも若干触れましたが、社債権者(購入者)は、期限前に解約して、償還を受ける換金解約をすることができます。一方、発行体は、一定の据え置き期間を経過後、期限前に全額または一部を繰上げ償還することができます。一部繰上げ償還は抽選によります。また発行体はいつでも全額または一部を買入消却することができます。繰上げ償還、買入消却は、事前に募集要項(または発行要項)に明示しておけば、社債権者平等の原則に反しないとされています。消却は公募債の場合、市場から市場価格で購入しますが、少人数私募債の場合は理論価格で消却します。

■ デフォルト

 デフォルトとは、公募債の発行会社が資金繰りに行き詰まって社債の元利金支払いが遅延したり、支払不能になった状態を指し、債務の不履行ともいわれています。デフォルトの際、担保付き社債なら担保処分した資金で元本や利息の一部が回収できる可能性があり、無担保社債は発行会社の再建見込みによって回収率が決まります。少人数私募債は無担保、無保証なのでデフォルトのような状況に陥った場合の社長以下経営陣の社会的責任は重いといえるでしょう。できるだけ避けるべきですが、事情やむを得ない場合は、明確な経営改善計画を作成し、社債権者に社債元利金支払い猶予、利率引下げ、借り換え等を要請することもできます。そのためには、次のような作業が必要です。
(1)企業の再建目標値を掲げ、その過程を明確に策定。
(2)3年後、5年後のあるべき姿、ビジョンを明確化。
(3)幹部社員との徹底的な議論を通して諸施策を決定。
(4)事業計画書の軌道修正と再構築。
(5)社債権者集会を開いて賛同を得る(議事録は10年間保存)